春の庭に思うこと
春先、空き地に福寿草やクロッカス、しばらくするとチューリップ、水仙のお花畑を見かけることがあります。かつてここに住居があり、おそらくこのあたりを庭にされていたのだろうと想像します。球根はここに住んでいた方が植えたもの。植えた方が引っ越されても球根は毎年同じ場所に開花して存在を教えれくれます。かつての人の営みを感じさせてくれる無人のお花畑に出会えると嬉しい気持ちになります。
わたしの家の庭に突如、にょきっと生えてきた植物がありました。何だろうと近づくと香りや形から“うど”だと分かりました。今年庭を造り直し整地されていたので、突如現れたように見えた“うど”でした。
そういえばと、他界した父が昔植えたことを思い出しました。整地しても地下に根茎がしっかり残っていたのです。日々すごい勢いで成長するうどを美味しいうちにと収穫し、いただきました。山うどらしい良い香りを楽しませてもらいました。
“うど”は漢字で“独活”と書き、“どっかつ”とも読みます。関節や筋肉の慢性的痛みに効果があります。『独活寄生湯どっかつきせいとう』という漢方処方の主薬として使われます。処方名にもう1つ入っている“寄生”という言葉は“桑寄生”という薬草のことです。日本では“やどりぎ”と呼ばれます。漢字の意味通りに落葉樹に寄生して成長する植物です。落葉樹の葉が落ちる秋~冬に緑の玉が樹木の高いところに見えるのがそれです。“やどりぎ”も乾燥して用いると生薬となり、関節痛や腰痛に効果が得られます。“うど”の薬用部位は根になりますが、抜いてしまうと来年生えてこないかもしれないため、自宅のうどは抜きません。来年もうどが生えると父のことを思い出すのだろうとと思いました。