私が産後に気をつけたこと 〜その2〜『腎虚』(じんきょ)
『腎虚(じんきょ)』の話の続きです。
産後二ヶ月で仕事を再開し、完全母乳で育てていますが、出産前に比べて身体が疲れやすくなったと実感しています。
自分の身体のケアを妊娠前からかなり意識してきたつもりですが、それでも元気いっぱいですとは言い切れないのが今の本音です。もともとの体力や原因は他にもあるかと思いますが、“疲れやすくなった”のはやはり38歳での出産と考えています。
産後その2編は、
- 38歳で出産するということ
- 腎虚のケアはなぜ大切か
を中心に書きます。これから初産を迎える38歳以降の方の参考になると幸いです。
『腎虚(じんきょ)』は年齢とともに必ず起こる現象と漢方では考えています。違うのは、腎虚証のはじまる年齢と腎虚の症状の程度です。
腎虚を説明するために“腎精(じんせい)”のことをまず説明します。
人は“腎精(じんせい)”という生命力を両親からもらって産まれて来ます。食べ物を摂り、身体を動かして成長とともに“腎精”を充実させます。女性の腎精のピークが28歳で、35歳からはこの“腎精”は衰え始めます。(男性は32歳がピーク、40歳から衰えます)この衰えが症状として出てくると『腎虚(じんきょ)』と呼びます。
腎精には生殖能力も含まれますので、女性は35歳以降に男性は40歳以降に妊娠力が衰えはじめることになります。この考え方は2000年以上前の書物(『黄帝内経素問』)に載っているのですが、現代の医学的見解と一致しています。
現代医学では、妊孕性(にんようせい:妊娠する力のこと)は20〜24歳がピークで、妊孕性の低下は20代後半から起こり、30代後半までには明らかな低下が認められる、とされています。
妊娠を切に希望されるご夫婦は多いので、妊娠までをクローズアップされることが多いのですが、そのあとのことも私は考えて頂きたいと思っています。
腎精が衰える、妊孕性が低くなるといわれる35歳以降は、産後の回復も“ゆっくり”もしくは“回復しにくい”ということを同時に意味します。
腎精は先程説明しましたように、言い換えますと“生命力”そのものです。自分の命を削って子供を出産するのです。ですから、消耗した腎精を育児をしながら(=不眠不休を伴いながら)取り戻すことは現代の普通の生活をしていては取り戻せません。
徹底した食事療法や身体のケアを出来る方は別として、35歳以降に出産した方には『腎虚(じんきょ)』のケアを考えてもらいたいと思っています。
前回の記事でも腎虚の可能性がある症状を書きましたが、更に追加しましたのでチェックしてみて下さい。
冷え性が強くなる:出産前からあったとしても手足だけだった冷え性が全身に感じられるように。
夜中のほてり:寝ている時、手足がほてって布団から出したくなります。
トイレが近い:日中の小水の回数が増え、一回の排尿量が減ります。夜中もトイレで起きること何度か。
髪の抜ける量が多い、期間が長い:産後三か月頃から気血不足からくる脱毛がはじまりますが、ほとんど抜けない方もいらっしゃいます。多い量、長期間抜ける方ほど気血不足にプラス『腎虚』の原因が考えられます。
痩せてしまう:母乳をあげるために食欲が増えるかと思いますが、しっかり食べている割に痩せていく方がいらっしゃいます。その方も気血不足に『腎虚』の原因が潜んでいます。
私の場合は、上記のうち3つ当てはまりました。『腎虚』のケアをする目的は、上記の症状を改善する以外にもあります。
第二子を考えている場合、早めの身体の回復が大切です。
- 腎虚のケアで“丈夫な卵子を作る”、“排卵のリズムを整える”、“丈夫な赤ちゃんを宿し育てる”ことをサポートします。
- 早い方は産後10年経たないうちに閉経時期に入りますので、近い将来の更年期症状を重く出さないよう予防することに繋がります。
最後に4月29日の朝日新聞に載っていた記事の紹介を。体重の少ない赤ちゃんは将来生活習慣病のリスクが高まるという内容で、高齢出産が低体重になる1つの原因と書かれてあります。
最近“駆け込み妊娠”という言葉をよく耳にします。私は心ないネーミングだな、と感じています。
妊娠を望める状態、妊娠に至ったのが結果的に35歳以降だったという方は多いと思います。高齢出産が増えるのは、20代で初産がしにくい今の日本の現実の姿です。個人の問題だけではないと思います。
元気な子供に育ち、健康でいて欲しいというのが親の願い。出産時に丈夫な子供を産みたいと母親は願います。産後も心身共に元気であれば、余裕をもって慣れない育児に向き合うことが出来ます。赤ちゃんも元気なお母さんに見守られて、安心して成長することが出来るでしょう。
いつか子供は巣立っていきます。それ以降も自分の人生はまだまだ続きます。更年期も身体は穏やかに、心は好奇心をもって生きて行きたいですね。そのためにも“腎虚(じんきょ)”の予防について考えてみてもらいたいと思います。
かなり長いブログになってしまいました。