産後の不調は身体に必要な血液が足りていない「血虚(けっきょ)」が関係していることも
朝日新聞にて『出産』にまつわる話題が連載されていますが、10月16日は、“母体トラブル”「産後の不調 独り悩む」というテーマで620人の方からのアンケート結果を合わせて記事が掲載されていました。
いろいろな事情で出産を親元に帰らずにされたり、出産後退院してから、家事や育児のサポートをしてもらったり、体調の相談が出来る年上の女性が身の周りにいないことが背景としてあるようです。
人生はじめての体験でせいいっぱいの所に、産後の不調が加わると、ゆとりをもって親子で過ごすことができなくなり、アンケートからみても辛い経験をされた方が多いようです。
アンケートの内容を読んでいて、気付いたことですが、漢方では一般的に考えられている“産後は血虚血オ(けっきょけつお)の状態である”ことによる症状がいくつもありました。
- 肩こり
- 腰痛
- イライラしやすい
- 疲れ目
- 眠れない
- 子宮まわりの病気、不調
これらは上記の血虚と大きく関係しています。
血虚(けっきょ)とは
血虚(けっきょ)とは、からだに必要な血液が足りていない状態を現す漢方用語(体質を指します)です。
妊娠中も赤ちゃんに血液をたっぷり分け与えるので貧血になりやすいのですが、出産はさらに血液だけでなく、漢方では気血(きけつ)を一気に消耗すると考えています。
出産後のお母さんは、だれしも気血不足の状態です。(一時的に顔面蒼白になります)入院中に、赤ちゃんをみてもらいながら、安静と食事から“気の補給”はできるものの、“血の補給”には入院期間では間に合いません。なので、退院してからも“血(けつ)を減らさず増やす養生”が引き続き大切なのです。
漢方では、血虚になった場合、からだの
- 筋肉や筋
- 目
- 爪
- 髪
に変化が現れると考えています。
血虚の方の筋肉は、柔軟性がなくこわばりやすい(凝る)、目は疲れやすい、爪は薄くなったり割れやすい、髪は切れやすくなったりパサ付きやすくなります。また深く眠ることが出来なくなるのも血虚の特徴です。
また内臓の中で血液を貯蓄してるのは、『肝臓』と漢方では考えています。
この肝臓は情緒の安定をコントロールしている内臓でもあり、血虚の方は肝臓の血液の貯蓄率が下がるので、ヒトにより無性にイライラしたり、逆に気分が落ち込んでしまう場合もあります。両方が現れる方もいます。
「血虚」が続くと「血お(けつお)」に
さらに血虚が続くと、血がとどかない場所が出てきます。その場所は血行がわるくなります。それを“血お(けつお)”と呼びます。(体質名です)
血行が悪くなると、婦人科の内臓である子宮や卵巣に痛みや冷え症状が出やすくなります。また筋肉や筋はよりこわばりやすく、凝りが酷くなります。肛門の筋肉に影響が出た場合は、痔になってしまいます。
産後は良質のたんぱく質(魚・赤身の肉・卵・牡蠣)や緑黄色野菜・海藻(ミネラルたっぷり)をたっぷり使った鍋やサムゲタン風のスープ(エキスが一番出ているので)がおすすめです。一~二度飲めるだけでも回復が違います。中国や韓国では家庭で、そこに当帰(とうき)・朝鮮人参・黄耆(おうぎ)などを入れてより効果を高めます。
特に「当帰」は血を増やし、血行を良くしますので、血虚・血オ体質の方にはとても合います。産後の女性は全員血虚体質ですから、「当帰」は一番おすすめできる生薬です。
記事中にも書いてありますが、産後一ヶ月は骨盤をつなぐ靭帯が柔らかくぐらつくそうです。産後はあえて横になっている意味がよく分かりますね。