2016年春の講座は終了しました
4月24日、26日に二日間で開催しました『いちやく草春の講座』は無事に終了致しました。二日間で3名のお客様に受講いただきました。
今回のレジュメと受講プレゼントの春の薬湯です。
レジュメの表紙の写真は、根開きを撮影した札幌市三角山の現在の写真です。
講座は、最初に『黄帝内経(こうていだいけい)』という2500年前の書物の説明から始めました。こちらの書物には、自然の現象について、自然と人間の関係について、身体の考え方について、それに基づく季節(五季)における養生法について、書かれています。
四気調神大論篇という箇所に養生の方法が載っています。
以下春の部分の意訳です。
・夜は冬より長めに起きててもよいが、朝は早く起きましょう。
・身体を動かしましょう。程度は公園の散歩くらいが適切です。
・結ったり、束ねていた髪をほどいて梳かし、衣服も気温に応じて軽くしましょう。
・心は伸びやかに、考え方も柔軟になるように気をつけましょう。
そして、最後の一文に気になることが書いてあります。
上記で紹介した養生の方法に逆らったことをすると、肝(かん)を傷めます。すると、次にくる季節の夏に体調を崩すことになります。
この“肝(かん)”とはいったい何でしょうか?
肝(かん)について
肝(かん)とは、漢方の考え方の元となっている哲学:五行説(ごぎょうせつ)からきている“五臓(ごぞう)”の1つです。
五臓は、生命を維持する上で大切な機能を担当している内臓を表しています。肝(かん)・心(しん)・脾(ひ)・肺(はい)・腎(じん)の5つを重要視します。
肝は、現代の生理学の働き(解毒や胆汁の生成)以外に以下の機能を担当していると漢方では考えます。
・血(けつ)の製造と貯蓄の管理者
・気(き)を巡らすことについての管理者
血(けつ)は、血液をイメージしていただくとおおよそ合います。
気(き)は、私達が普段使う言葉である「気力」「気合」「気疲れ」「気苦労」の“気”と重なります。気は心と身体を動かす原動力であり、消耗すると心も身体も疲れとして感じます。エネルギーのため、目では見えませんが、感じることが出来ます。その気を管理しているのが、漢方での肝の役割です。
血の製造や貯蓄が上手くいかないと、目が疲れてきたり、肩がこったり、生理前〜中〜後にクラクラと立ちくらみがします。
気が巡らないと過剰にイライラしたり、気分が落ち込んだままになったり、いつもなら気にならない他人の発言や行動にとても敏感になります。
さらに強い症状が出る方もいます。
例えば、頭痛・耳鳴り(キーン)・血圧があがる・顔〜頭部ののぼせといった症状が強く出るようになります。
それでは、春の影響を受けると考えられている肝(かん)という内臓をいたわるにはどうしたら良いのでしょうか?
肝と春の野菜の関係
『神農本草経(しんのうほんぞうきょう)』という中医学最古の薬草の専門書があります。そこには、五味(ごみ)という言葉があり、長い歴史の中で、すべての薬草には”酸・苦・甘・辛・鹹(かん:塩辛い)”のいづれか味があり、それぞれの味には共通の効能があると考えられています。
酸味は、収斂・固渋。
苦味は、通瀉・降気・燥湿・堅陰
甘味は、補益・和中・緩急
辛味は、行気・活血・潤養
鹹味は、軟堅散結・泄下通便
春はスーパーの生鮮食品コーナーで見かける旬のお野菜は、
菜の花・ふきのとう・ふき・うど などが並びます。
また、自然が近い札幌でも、雪融け水が流れる山の麓に出かけますと、
ふきのとう・よもぎ・ニリンソウ・エンゴサク・うど
を見つけることができます。
春の山菜は、見て楽しむこともできますし、中には食べることもできる山菜もあります。ですので、春の山菜採りを毎年楽しみにされている方もいらっしゃいます。
旬の春の野菜と食べられる春の山菜に共通している点は、”灰汁(あく)”を持っていることです。そのため下茹でや、茹でた後にさらに水で晒してから調理します。この灰汁を先ほどご紹介した”五味”に例えるとしたら、”苦味”に当たるのではないかと思います。
苦味が持つ働き”通瀉(つうしゃ)”は、活動が少ない冬の間に、からだにたまっている不要な老廃物を便通から排泄する働きです。その際、不要な熱やむくみの原因になる不要な水も一緒に排泄してくれます。
先ほど、春は肝を傷めないようにした方が良く、その肝は”気を巡らせる”大事な機能を担当していることをご紹介しましたが、気が巡らなくなると気は上に上にと一方向に進む性質があります。その時に、気持ちがイライラしたり、頭痛や耳鳴りの発症に関係する場合があります。そのような時、苦味には”降気(こうき)”という働きがあるため、上がり過ぎた気を下に降ろしてくれます。
五味の考えと働きから、春に旬の野菜を食べることは健康を維持するために有効なことが分かりました。
春になると山菜を採りに出かけたくなるのは、身体の本能かもしれません。
公開日:2016/04/30
最終更新日:2016/08/09