養生生活グッズ
薬湯(やくとう)
薬湯(やくとう)とは
日本人の生活から切り離せない、湯船につかるという習慣。
仏教伝来とともに中国から入ってきました。
仏教の修行の1つの行(ぎょう)として身体を浄めるために、蒸し風呂や湯に浸かったことが入浴のはじまりです。その建物は湯堂・浴堂と呼ばれます。
昔はお寺が現在の医院・病院機能を担っており、庶民の健康相談や医療を施していました。施薬院(せやくいん)と名付けられ施設は、特に特化した機能をもったところでした。
現在でも奈良県の東大寺と法華寺に施薬院があり、薬湯が販売されています。(「東大寺薬湯 天真(医薬部外品)」/「法華寺施薬院くすり湯(医薬部外品)」。当時から薬湯が治療に用いられたことを教えてくれます。
その後江戸時代に銭湯ができ、そこで庶民が薬湯風呂に入ることができるようになりました。自宅で薬湯にはいる習慣は、家庭にお風呂が普及した高度成長期(昭和30年代〜40年代)になってからで、身近な薬草を自分で採取し薬湯に用いました。自宅での薬湯は比較的新しい習慣ですが、どの薬草を用いるとよいかは、伝承によるものもあり、日本独自の民間療法(手当方法)として続いてきたと言えます。
薬湯という言葉を辞典でひきますと
①入浴のためのくすりゆ
②せんじくすり
とあります。(岩波 国語辞典第三版)
現在は手軽に使える製品化(顆粒やタブレット状)された薬湯があり、それはそれで良さがあることは事実です。ですが、本来の薬湯ではありませんので、服用することは出来ません。
本来の薬湯は服用も出来ます。
現代人の生活習慣やストレスは生活習慣病や自律神経失調症を引き起こしていると言われます。また現代病と呼ばれるアレルギー疾患を根本的に治す方法がないことからも、薬草のもつ自然の薬効はバランスを崩したからだや自律神経を整えるために有効と思います。
薬湯は、効果がありながら、作用は穏やか。
どなたでも安心してお使いいただけます。
薬湯に用いられる薬草のご紹介
◎べにばな(紅花)
キク科ベニバナの花びらを用います。花びらは染料としても使われたり、紅花の種から採れる油はサフラワーオイルとして日常的に使われています。
漢方薬では、『つうどうさん(通導散)』『けっぷちくおがん(血府逐オ丸)』『かんげんかりゅう(冠元顆粒)』に配合され、月経不順・更年期障害・腰痛・高血圧の随伴症状(頭痛・めまい・肩こり)等に用いられます。
薬湯効果:肉体的&精神的疲れ、不眠、肩こり、冷え
◎とうき(当帰)
セリ科の植物の根です。日本でも昔から栽培されており、北海道・群馬県・奈良県が現在でも産地です。(当店は北海道産を使用しております)
『とうきしゃくやくさん(当帰芍薬散)』・『きひとう(帰脾湯)』・『しもつとう(四物湯)』『ふほうとうきこう(婦宝当帰膠)』に配合されています。
女性特有の疾患や症状に対して使われる代表的な薬草です。漢方的貧血体質(けっきょ血虚体質)を改善し、身体を温めます。
薬湯効果:生理痛、貧血
せんきゅうと一緒に使うと効果がupします。
◎せんきゅう
こちらもセリ科の植物の根です。
血流を改善する薬草ですが、それだけではなく、漢方で体内に巡っていると考える“気”の巡りを改善する効果も併せもちます。鎮痛効果があり、頭痛薬として配合されます。代表処方は『せんきゅうちゃちょうさん(川キュウ茶調散)』です。
他の薬草の血流改善効果をより高める役割として、『とうきしゃくやくさん(当帰芍薬散)』『しもつとう(四物湯)』『さんそうにんとう(酸棗仁湯)』にも配合されています。
とうき(当帰)と相性が良い薬草です。
薬湯効果:頭痛、神経痛、生理痛。
◎みかんの皮(ちんぴ:陳皮)
ウンシュウミカンの皮を1年以上乾燥させた物を陳皮(ちんぴ)と呼びます。
芳香性健胃薬として漢方の胃腸薬に配合されます。膨満感、食欲不振、吐気に効果があります。
薬味として七味唐からしに含まれております。(八幡屋礒五郎さんの七味唐からし)(ハウス食品さんの七味唐辛子)(S&Bさんの七味唐からし)
皮には精油成分:リモネン、ヘスペリジン、ビタミンCを含み、薬湯で用いますと皮膚の荒れに効果的です。またミカンの香りが好みの方にとっては、気分をリフレッシュしてくれます。
漢方薬では、『りっくんしとう(六君子湯)』『こうしゃりっくんしとう(香砂六君子湯)=けんいかりゅう(健胃顆粒)』『へいいさん(平胃散)』に配合されます。
◎よもぎ(艾葉)
春、雪融けとともに新芽が出てきます。新芽や若芽の部分を用い、よもぎ団子やよもぎ餅に使われています。よもぎの葉の裏には白い毛があり、それがもぐさ(艾)の原料となり、お灸に使われています。私たちの生活に馴染み深い薬草の1つです。
漢方薬や薬湯で用いる時には、植物が一番成長した夏〜秋に採取し、全体(全草)を使います。
乾燥させたよもぎの葉は、お腹や腰回りの冷えに効果的です。
薬湯効果:冷え、生理痛、腰痛、痔の痛み
漢方薬では、『きゅうききょうがいとう(きゅう帰膠艾湯)』に入っています。この漢方薬は生理時に出血が多過ぎることによる症状(貧血等)の改善や、不正出血が続く場合の改善に用います。
◎どくだみ(十薬じゅうやく、魚腥草ぎょせいそう とも言います)
ドクダミ科ドクダミ属の植物で、多年草です。
ドクダミという名前は、“毒痛み”“毒止み”の言葉が由来とも言われます。
北海道から沖縄まで日本全国に自生しています。繁殖力があり、独特な匂いから敬遠されますが、この匂いのもとである精油成分:デカノイルアセトアルデヒド・ラウリルアルデヒドに強い抗菌作用があります。日本独自の手当方法(民間療法)では、皮膚の腫れ物や蓄膿症(副鼻腔炎)に使います(生の葉)。
乾燥させたどくだみには精油成分がなくなるため、抗菌効果は弱くなりますが(独特の匂いも消えます)、十種類の薬になることから“十薬”と別名を持つように、他にも多くの効果があります。また乾燥させることで保存できるようになるため1年中用いることが出来ます。開花している時に採取し、地上部全体が使えます。
乾燥したどくだみの葉には、クエルシトリン・イソクエルシトリン(フラボン系成分)が含まれ、これらには便秘を改善する緩下作用、体内にたまった余分な水分を排泄する利尿作用、毛細血管を強化するルチン作用があります。そのため、民間療法として便秘やむくみ、膀胱炎、おりものの症状、高血圧症に用います。
薬湯として用いる時に、服用ほどではありませんが、皮膚からも薬草の成分が少なからず吸収されます。
薬湯効果:皮膚疾患(アレルギー性湿疹、ホルモンバランスの崩れからの皮膚疾患)、慢性便秘、慢性膀胱炎、更年期の冷えのぼせがある方の高血圧症、陰部のかゆみ、自律神経の乱れからの諸症状
漢方薬では『ごもつげどくさん(五物解毒散)』に入っており、かゆみや湿疹の改善に使われます。
◎こぶし(辛夷)
モクレン科モクレン属の落葉高木です。北海道から九州まで自生し、また庭木に植えているお家もあるため、白い大きな花を見て春を感じる方もおられるかと思います。コブシ・モクレン・タムシバは同じモクレン属で、同じ薬効が得られます。
味が辛いことから、“辛夷”という名前がついたそうで、生薬の五味(ごみ:生薬を薬効から分類した5つの味)も辛夷は“辛”に分類されています。
薬用部位は開花前のつぼみで、精油成分:オイゲノール・メチルカビコール・サフロール・シネオール等を含み、良い香りがします。この香りは乾燥させた後も密閉容器に保管しますと持続します。薬効にはこの香りも大切ですので、薬湯で用いるとき煮出す時間は5分以内をおすすめしています。
薬湯効果:風邪やアレルギーによる鼻づまりや頭痛、リラックス
漢方薬では、『かっこんとうかせんきゅうしんい(葛根湯加川きゅう辛夷)』『しんいせいはいとう(辛夷清肺湯)』に配合されます。どちらの漢方薬も蓄膿症・慢性鼻炎・鼻閉に用いられます。
◎はっか(薄荷)
シソ科ハッカ属の多年草で、地上部を乾燥させて使います。
漢方薬の原料として用いる薄荷は、ペパーミントやスペアミントとは成分が少しことなる品種である、和種ハッカになります。
日本ではかつて薄荷栽培が盛んな時期があり、世界の薄荷栽培の70~80%を占めていた時期(昭和13〜14年ピーク)があったほどです。現在でも北見市や滝上町で商業用和種薄荷が栽培されており、主に精油(ハッカ油)製品が作られています。
多くの方がご存知のハッカの香りは、精油成分の中のL-メントールやL-カルボンによるものです。
精油は外用に用いますと局所の血流改善により筋肉の緊張を和らげ、同時に鎮痛効果も得られます。また香りは脳を刺激し、この香りが好みの方ほどリラックス効果が得られます。
薬湯で用いますと精油に比べ穏やかに、肩こり・腰痛・神経痛・精神的疲れに効果が得られます。(乾燥させた薄荷にも精油成分は含まれますので、煮出す時間は5分以内をおすすめしております)
漢方薬での薄荷は、風邪の初期に入り込んだ風邪の元(邪気=ウイルス)を穏やかに体外に追い出したり、皮膚病のかゆみの緩和に用いられます。
『てんしんかんぼうへん(天津感冒片)』:かぜによるのどの痛み、口(のど)の渇き、せき、頭痛
『けいぼうはいどくさん(荊防敗毒散):急性化膿性皮膚疾患の初期、湿疹、皮膚炎』
に入っています。
慢性化した鼻づまりには、はっか(薄荷)とこぶし(辛夷)の薬湯がおすすめです。
いちやく草薬湯
当店でご紹介している薬湯は、お使いいただく方の体調や用途をうかがってから、ご希望によりパック詰めをして販売しております。
お使いいただいいるお客様のご感想から、薬草を2〜3種類に厳選したシンプルな薬湯の方が効果が良いようです。
組み合わせの例をご紹介しますと・・・・
◎どくだみ+紅花+みかんの皮(陳皮) 140円/1パック(8%税込価格)
◎よもぎ+とうき(当帰)+せんきゅう 150円/1パック(8%税込価格)
◎こぶし(辛夷)+はっか(薄荷) 105円/1パック(8%税込価格)
お客様からいただいた声に、
「今まで使ったことのある入浴剤に比べ身体がとてもあたたまる」「薬湯に入るとやすらぐ」「長年の便秘が改善してきた」などがございます。(お使いいただいている薬草の組み合わせはお客様ごとに異なります)
ご友人へのプレゼントにされる方もいらっしゃいます。
いちやく草薬湯ご利用二回目以降のお客様で、多めの数(10パック以上)をご希望の場合は、事前にご連絡いただけますとご来店日に合わせて準備致します。
薬湯の作り方、入り方
①鍋に薬湯1パックと水500ccを入れます(写真は紅花+よもぎ+当帰の薬湯です)
②弱火にかけ沸騰してから15分煮出します
(こぶし・ハッカの場合は5分で十分です)
煮出してから5分目
煮出してから15分目
③パックごと湯船に入れます
(人が入っていない状態で入れて下さい)
④10分以上湯船に浸かって頂くと効果的です
⑤お風呂から上がる際は、洗い流さないで下さい
(薬湯の成分がお肌に残り、効果が持続します)
※残り湯はお洗濯のすすぎ(最後のすすぎは水道水を)の際にお使い頂けます。
※浸け置き洗いには使わないで下さい。
※薬湯の色は天然の色です。日々薬湯を使いますと浴槽内に少しずつ色がつきます。毎回しっかり浴槽を洗っていただくとともに適度な間隔で漂白洗浄されることをおすすめ致すます。
<参考文献:よく効く薬草風呂 池田好子著 / 漢方と民間薬百科 大塚敬節著 / 自分で採れる薬になる植物図鑑 増田和夫監修 >
公開日:2016/02/21
最終更新日:2016/02/23