薬のネット販売:薬を店舗で購入することと薬の安全
11日(金)速報が流れ、翌日新聞等報道で一斉に出ましたのでご覧になった方もいらっしゃるかと思いますが、
『薬のネット販売、規制は無効』と最高裁判所の判決が出ました。
これは、インターネットを利用して薬を販売していた会社が、厚生労働省が2009年に出した“省令”による“通信販売の禁止”は無効であると訴えていた裁判の判決です。
これにより2009年6月より出来なくなっていた通信(インターネットだけではなく、手紙・FAX・電話注文による薬の発送も含みます)を介する薬の販売が出来る状態になりました。
しかし、政府は近いうちに議員立法で規制が出来る根拠になる“薬事法を改正する”方向で動くと話しています。
今回の裁判を通じて大きな問題は2つあると私は考えています。
- 薬に関することの法律である“薬事法”ではなく、薬全般を管理をしている厚生労働省の“省令”がどこまで規制の力をもっているのか
- インターネットを含む通信による販売を規制すれば、消費者の薬による副作用や事故は防げるのか
と、いうことです。
1については、厚生労働省だけの問題ではなく、どの省であっても法律を替えるより省令を出す方が簡単なので、省令さえ出せば何でも規制することが出来るようになってしまう、という問題があります。
そして、省令を出すことで、規制したいこと(多くは社会状況の変化で何らかの問題が生じていること)が結果として国民生活の安全とプラスにつながるのかということ。
2については、では消費者が店舗に行って購入したり説明を受ければ、副作用や事故の確率は明らかに減るのか、ということです。
当店は、漢方薬局の形態なので、ご相談に時間をかけたのちに適切を思われる漢方薬をご紹介して販売することが多いのですが、それでも服用後思わぬ症状が出てお薬を変えたり、中止して頂くこともあります。
ご連絡頂ければ早急に対処することが出来ますが、ご自身で判断されてお薬を止める方もいらっしゃることでしょう。また、次回ご来店され体調を伺った際に、替えた方が良いと思われる症状を見つけることもあります。
一対一の対応が多い当店でさえ、上記のことがあるわけですから、次の方が待っているレジでの薬の販売や、立ちながらの相談と、店舗を構えないけれども、自分の時間にゆっくりと画面を見ながらインターネットを通じて薬を購入する通販で、薬を替える必要や中止する必要がある場合の差がどれくらいあるのか考えますと、私はないように思います。
昼夜関係なく働くことを許容した社会で、病院に行く時間がない方が店舗で購入するケースも多く、さらに店舗へさえ行けない働き方をしている方はインターネットの通販を利用しないと薬も買えない社会であることは周知の事実です。
かたや厚生労働省は、“セルフメディケーション”という自分の健康を保険医療を使わずに出来るだけ管理してもらいたいという方向性を明示していますから、それと矛盾することにもなります。
私は、消費者が自分の生活に合わせて病院を選んだり、ドラックストアを選んだり、インターネットを選んだり、個人経営の漢方薬局を選んだりする社会が健全と思います。
そのうえで、売る側や薬を管理している側が、消費者に健康被害が出ないよう、情報を開示したり、漠然と服用しては危険な場合があることと、販売形態に則して“啓蒙し続ける”ことが大事ではないかと思います。
薬業界団体を通じて小学校・中学校への出張講座や、消費者への無料公開講座など、健全に購入して頂ける消費者になって頂ける努力をし続けていくことが、規制より大事ではないかと思います。